日本語と英語論文は、書き方や構成からして別物です。最終的にはネイティブの編集者などに見直してもらうことをおすすめしますが、それ以前にも気をつけたいことを紹介します。
日本語論文をそのまま英語に訳すだけでは、論文の構成からして違うので、英語論文としては説得力に欠けてしまいます。そうなると、どんなに研究内容が良くてもフルに評価してもらえなくて損です。
☑ 重要ポイントを最初に述べる。段落内でもまずは「結論」、次に「理由」
日本語ではまず「理由」を述べ、そこから「結論」へと読者を導くことが多いかと思いますが、英語では反対です。以前も書きました通り、全体の構成においても、伝えたいことはトップに書きます。さらに、各段落内でも同じで、まずは(その段落の)結論を述べてから、裏付けるデータや情報などを提示します。
(参考文献の①に詳しくわかりやすい説明がありますので、是非そちらをご覧下さい。)
☑ 後ろだてる証拠を必ず明記
証拠などで裏付けできない陳述は避けましょう。学術論文で「一般的に○○ですが…」”It’s common knowledge that…” という類の文を書けば、必ず誰かに「本当に?その根拠は?」”Really? Where’s the evidence?” と突っ込まれるものと覚悟してください。
「2019年現在アメリカ大統領はトランプだ」レベルの、本当に誰でも知っているような事実ならともかく、少しでも疑問を持たれそうなステートメントは、立証するもの・根拠を提示し、読者を参考文献へと導きましょう。
☑ 文章は短く
日本語では、末節をいくつも並べて長い文章を作っても読み手は理解できますが、英語ではNG。簡潔な文章の方が誰にでも読みやすいだけでなく、ストレートでインパクトもあり、特にアメリカでは好まれます。
英語ネイティブでもかなり独特な文才がない限り、長い文章は避けたほうがいいものですが、ネイティブではない方はなおさらです。短い文章に留めることで、文法ミスを犯す可能性も減りますし、途中で何が主語で何が述語かわからなくなる…などということも避けられます。
(ちなみに、スペルや文法ミスを見つけるには、AIを使ったGrammarlyがおすすめです!)
☑ 単語も簡単なのを選び、頭字語や専門用語を最小限に抑える
頭字語(acronyms)や高度なボキャブラリーを使えば論文の専門性や格調が高くなるような気になるかもしれませんが、これも実は読みづらさを増すだけです。
いくら冒頭で頭字語を説明したとしても、読みながら「これはなんだっけ」と何度も確認しなければならないのは、論文の大切な中身を理解する妨げとなってしまいます。
専門用語にしてもそうです。もちろん学界用に書く文書に専門用語を使うのは当たり前です。でも、読み手を想定して、用語を選ぶことをお忘れなく。同じ専門分野の相手に使える用語でも、ジャーナルの編集者・査読者・他の分野の研究者にとっては馴染みないものかもしれません。読み手がジャーナリストや一般大衆も含むようであれば、なおさらです。読み手に合わせて、使う専門用語を厳選するよう心がけてみてください。
また、専門用語以外も、中学で習ったような簡単な単語を使い、個々の文を短く区切った方が読みやすい文章になります。
反対に、学術論文だからといって難しそうな文章を書こうと気を張る必要もない、ということです。ストレートに・簡潔に・シンプルに。その方が効果的な英文になります。
(ちなみに、「学術論文らしく見せる単語」なんておふざけリストがありますが、こういう単語は絶対避けて下さいね^^)
せっかくの研究内容を理解し納得してもらいたいのであれば、読み手になるべく親切な言葉を選び、頭字語や専門用語を最小限に押さえてみて下さい。
いかがでしたか?他にも「これも大切!」と思われるポイントがあれば、コメントへどうぞ。
おすすめ参考文献
①「上手な科学英語論文の書き方」 中山 裕之著:日本語vs英語の論理や書き方の特徴をよく捉えて説明しています。どれも頷けるポイントばかり。英語編集者として贅沢を言えば、英語の例はまだまだ改善の余地がありますが、さすがに日本語と比較するポイントや例はすばらしく、的を得ています。
②「若手研究者が魅力的な英語論文を書くためのヒント」高橋 雅英( Editor, Cancer Science)著 :さすがジャーナルの編集者、専門家です。投稿論文を出版するか選ぶ側からの実践的なアドバイスがぎっしりとつまっていて、必読です。
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