「スタイルシート」という言葉を聞いたことありますか?簡単な道具ですが、使うメリットはいろいろ。 編集や翻訳を依頼する時などにも役立ちます。上手く活用して、論文や記事のレベルアップをしましょう。
編集や翻訳された文章と共に、スタイルシート(英語で’style sheet’)を作成してくれる編集者や翻訳者がいますが、これを上手く活用できると、論文や記事に磨きがかかります。
でもスタイルシートとは一体どのようなものでしょうか。そしてどのように使うものなのでしょうか。
【目次】
スタイルシートとは
スタイルシートとは、文書内が統一されるように、使われたルールや書式などを明記したものです。
これから詳しくスタイルシートの内容をご紹介しますが、その前にまずはスタイルシートを使うメリットのお話から。
スタイルシートを使うメリット
スタイルシートは、著者を始めドキュメントを扱う人全員が、文章の様々な要素を同じように扱えるよう、手助けをしてくれます。
「同じように扱う」ことが何故、大切なのでしょうか。
文章の大文字・小文字の使い方や固有名詞のスペルがバラバラだったり、同じような場面でシングル「‘’」とダブル「“”」の引用符(quotation marks)がごっちゃに使われていたり…などという「表面的」なことでも、読み手に違和感を与えてしまいます。
そうなると、本来伝えたいことと関係ないところに読み手の注意が行ってしまい、下手すると著者の信頼性までが落ちてしまいます。
たかが表面的、されど表面的。
表面的な「一貫性」は実は重要で、そういう”consistency”のお手伝いをしてくれるスタイルシートは、書き手の強力な味方なのです!(^^)
ご自身でそのような表面的な部分に気をつけて直すのもよし。
そんなところまで手が回らなかったり、別の人にも確認して欲しいという方は、編集者に依頼することも可能です。 (その場合は、予めその旨を伝えることをお忘れなく☆)
そういう場面でも、スタイルシートはクライアントさまと編集者・翻訳者のコミュニケーション用の道具として活躍してくれます。
守って欲しいルールやスペリングなどの指示を(簡単なものでもいいので)スタイルシートとして編集者や翻訳者に予め渡すことにより、確認のやり取りや修正の手間が削減され、
- クライアントさまの時間と費用の節約につながる
- 納品のクオリティが上がる
…というメリットにつながります。
スタイルシートに記載する項目
さて、どのような点をスタイルシートに載せるべきか、見ていきましょう。
スタイルシートはよく次のような点に触れます。
かなり細かい点までカバーできますが、実際には必要あるポイントのみ明記してあれば十分ですので、あまり硬くお考えにならなくても大丈夫です(^^)
☘ スペリング
- イギリス英語かアメリカ英語、どちらを使用するか
- イギリス英語でも、globalization/globalisationなど 「z」と「s」 で綴る単語は、どちらを使うか1
- 特定の単語のスペル、ハイフン使用の有無など。
- 専門用語の正しい綴りを明記すると、間違いがありません。
例 | |
---|---|
ハイフン使用の有無 | decision-making | decision making e-mail | email |
頭文字の大文字・小文字 | Government | government (『米国政府』を指す場合は大文字、政府一般を意味する場合は小文字」…などと指定も可) |
大文字の使い分け方 | from Western Europe | from the western part of Europe:「西洋文化や社会」を指したり、地名として使う時は「West」、方角は「west」 |
固有名詞や専門用語のスペル | the Great Divergence Third Culture Kids |
☘ 大文字・小文字
- 題名、見出し、図のキャプション(説明文)などの頭文字をどこまで大文字にするか。
例 | |
---|---|
主な言葉の頭文字のみ大文字 (Maximum capitalsとも言われます) | Using Uppercase Letters for All Main Words: An Example |
最初の単語のみ大文字(「:」の後の最初の単語も大文字)(Minimum capitalsとも言われます) | Using uppercase letters for the first word only: An example |
☘ 句読点
- Serial commaの利用の有無(A, B, and Cの「and」前のコンマの有無)
- Quotation marksの種類(シングルかダブルか)
- その他のpunctuation(例:em dash「—」の周りにスペースを入れるかどうか)
☘ イタリック・ボールドなど
- どういう時にイタリックやボールドを使うか(「本の題名はイタリック」など)
- 「外国語」にイタリック使用の有無など (正しい綴りのリストもあると便利)
- ちなみに、イタリックやボールドでない「ふつう」の状態は「roman」と呼ばれます
☘ 略語
- 略語に「.」を使うか
- 名前はどのように略すか(略す場合)
例 | ||
---|---|---|
「 .」の有無 | Ms. / Mrs. / Mr. / Dr. / Prof. | Ms / Mrs / Mr / Dr / Prof |
U.S.A. | USA | |
名前を頭文字のみにするか、「.」を使うか、スペースを入れるか | Amantine Lucile Dupin | Amantine L. Dupin | A.L. Dupin | A. L. Dupin | AL Dupin | A L Dupin |
- 利用する頭字語のリスト もあると便利です
☘ 数字
- どこまで言葉として書き出し、どこから数字を使うか。
例 | |
---|---|
数はどこまで 言葉で書き出すか、 数字で表すか | One to ninety-nine(言葉で表す) 100 and above in numerals(数字で) |
One to ten(言葉で表す) 11 and above in numerals(数字で) | |
その他 |
|
☘ その他
- ジャーナルや大学などが「Chicago Manual of Style」「Publication Manual of the American Psychological Association (APA)」などの書式を指定した場合、もちろんそれが基本となりますが、その論文や記事特有の固有名詞などの書き方などは、簡易スタイルシートにやはり明記すると、間違いないでしょう。
- ウェブサイトのURLの表示方法。例えば: 「https://」 や 「http://」なしで書くか
- その他、気をつけてもらいたいこと
スタイルシートを作るのは誰か
さて、スタイルシートは誰が作るべきなのでしょうか?
著者ご自身がお作りになることもできますし、編集者・翻訳者が作ることも可能です。どちらが正しいというわけではありません。
スタイルシートは著者ご自身にも役立つ道具ですので、文章を書きながら気づいた点をメモっていかれてもいいかと思います。
編集者・翻訳者にスタイルシートを作成して欲しい場合は、(くどいようですが^^;)依頼時にお伝えください。(ちなみに、編集者・翻訳者によっては有料オプションとなる場合もあるようですが、The Clarity Editorでは簡単なスタイルシートはそのような追加料金はなしでお作りますので、必要な方はお気軽におっしゃってください。)
スタイルシートを受け取ったら
☘ 編集前・準備段階
編集者・翻訳者がスタイルシートを作成して、まだ草書に関するやり取りをしている段階であれば、受け取ったら目を通し、 変えて欲しい点があったら速やかに返しましょう。
☘ 編集後
編集者・翻訳者が最終版を提出した後は、ご自身で戻ってきたドキュメントを修正することになりますが、ここでもスタイルシートがあると便利です。
例えば、編集者が「policymaker」と一貫したのを「policy maker」と2つの単語に分けて書きたい…とお思いになったとします。その場合、ワードの「検索」と「置き換え」機能で一気に置き換えることが可能です。
他にも、スタイルで変更したい箇所があるか、スタイルシートを見ればすぐ把握できますよね。
こんな風に色々と役立てるスタイルシート。是非、ご利用してみてください。
↑この記事でご紹介しましたスタイルシートの、ひな形(Word)ファイルです。是非ダウンロードして、ご活用下さい♪
【使い方】外部サイトへ飛びます。ご希望のアイテムをカートに入れて金額は「0」とし(ドネーションも大歓迎ですがw)、メールアドレスを入力すればダウンロードリンクが手元に届きます。
クライアントさまが必要としている英語をしっかり把握し、安心のサービスを提供します。本場の英文を求めているなら、まずはご相談ください☆
Footnotes
- イギリス英語では「-ise」のみ使われてると思われるかもしれませんが、イギリスのオクスフォード辞書Oxford English Dictionaryは「-ize」でも良いとしていますので、スタイルシートにどちらにするのか明記します。参照: https://www.lexico.com/grammar/british-and-spelling