よい英文を書くためには、まずは「誰に」「何を伝える」ための文書なのかをしっかり把握することが大切です。
どんな文書であろうと、書き始める前にきちんと把握しなければならないことがあります。それは、その文書は「誰に」「何を伝える」ために書くのかです。
書き手がその2つをはっきり把握していないと、何の情報をどんな順番に入れるかなどあやふやになり、わかりにくい文章になってしまいます。
今回は国際開発関連の例を使いますが、最後に学術論文を書いている方向けにも一言ありますので、お見逃しなく。
書き始める前に決めなければならないことは、次の通り。
▶ 誰のために、なぜ書いているのか
まず、読み手を想定します。
- 誰のために書くのか(ターゲット読者は誰か、何を必要としているのか)
- 書き手として、読者に何を考え・感じ・実行してほしいのか
- そのためには、どんな情報が必要・不必要か(読者たちはどんなことを求めてこの文書を読むのか、何を知っていて何を知らないかも考えます)
これらの答えをまずは簡単に書き留めておきましょう。考えをまとめるのに役立ちます。
国際協力機関では、ひとつのレポート用に各部署が文章を提出することがよくあります。そのような場面でも、全体の目的をしっかり把握したほうが的確な文を用意できます。全体をまとめなければならないスタッフや上司もよろこびますね(^^)
▶ 伝えたいことはなにか
次は、その読み手に伝えたいことは何か。
そんなのわかってる・当たり前だと思われるかもしれません。が、自分でも何を言いたいのかはっきり決めないで書く方は意外と多いものです。
日本語ならあいまいな文でも通るかもしれませんが、情報を伝えようとする英文では許されません。書き手が伝えたい根本のメッセージは何か・要点は何か。それが明確でなければ「いい文章」として認めてもらえないのが、英語です。
ですから書き手は、伝えたいことをしっかり把握する必要があります。書き手本人ですらわかっていなければ、読み手にわかるわけがありません。
これについては別の記事でもう少し詳しく書く予定です(^^)英文でよければ、こちらをどうぞ→Key to clearer writing: Know what you want to say
▶ 全体の流れ・構造は
もう一つ忘れないでおきたいのは、文書はそれぞれ独自の流れがあることです。「論理」や「物語」とも呼べる、読者がたどる道です。
そうなると書き手はナビゲーターのようなもの。読み手をどのような道で(流れ)どういう行き先(結論)へ連れていくか。道中、どのような景色(情報)を見せるかなど、決められます。
道にも色々あるように、文章にもまっすぐな流れもあれば、曲がりくねったのもあります。情報を伝える文書では、なるべくストレートな道。Feature storyなどでは、少し曲がりくねった方が面白みがあるかもしれません。
例えば次のような文書があります。
- ドナーにプロジェクトの延長をリクエストする書簡
- 研修を宣伝するパンフレット
- 研究レポートを一般の人に紹介するオンライン記事
それぞれの読み手や用途にあった流れとは、どのようなものでしょうか。
文書 | 読み手 | 読み手に思って欲しいこと・して欲しいこと |
---|---|---|
ドナーにプロジェクトの延長をリクエストする書簡 | 外務省の公務員 |
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研修の宣伝用パンフレット | 研修の対象者(例えば、「南スーダンの女性起業家」) |
|
研究レポートを一般の人に紹介するオンライン記事 |
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|
右端の欄を見れば、どのような項目をどのような順番で文書に盛り込むべきか、ここで大体把握できます。
次は、これをもとに文書の構造を決めます。
英文でよく使われる「型」がいくつかあるので、用途が合うのであれば活用してみてください。こちらも日本語記事はまだなので、英語でどうぞ→Different documents need different structures
▶ 学術論文の場合は?
さて、ジャーナルに寄稿する記事を書いている研究者の方には、これらの点はどう関係あるのでしょうか?
やはり、「なぜ」書いているのか把握しなければなりません。例えば、2つの文書タイプを見てみましょう。それぞれ読み手と、著者の目的があります。
文書 | 読み手 | 読み手に思って欲しいこと・して欲しいこと |
---|---|---|
ジャーナル記事 |
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一般向けオンライン記事 | 一般の人 |
|
読み手が研究の内容を理解し、結論に納得するようにパーツを選び、列べていくイメージです(^^)(プレーンランゲージを使えるとなお良し!です。)
ジャーナルに提出する記事であれば、内容やまとめ方は大体決まっています。Introduction – methodology – results – discussion (IMRaDとも呼ばれる) 「型」もしくはそのバリエーションを指定されているので、それをきっちり守ります。
この場合でも、各セクションに何を入れるべきか。それらが一番伝えたいメッセージ(研究結果)をどう後ろ盾する(サポートする)か、予めよく理解してから取り組むことをおすすめします。
どんな文書にしても、「誰」に「何」を伝えたいのか予めしっかり把握することで、何をどういう順番で文書に取り入れるかも明白になります。
この記事の内容は、ユニタール広島事務所で行ったウェビナーの一部から抜粋しました。
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