英文には、「型」がいくつもあることをご存知ですか?文書に適切な型を上手に使えると、ぐっと英文レベルが上がります。
英語の文書の多くでは、「型」(雛形)を使えることをご存知ですか?上手に使うとぐっと全体の英文らしさが上がるという、書き手の力強い味方です。
今回はいくつか定番の型のご紹介と、どのように文書の構成を選ぶかお話します。是非活用してみてください。
コロナ禍真っ只中の2020年。ふと参加した「一般にも広く読んでもらえる科学ライティング」ウェビナーの一枚のスライドに驚かされました。
そのスライドには、文書の「型」をまとめられていましたが、こんなにいっぱいあったのです!
それもハンバーグやらソフトクリームやらバーベキューと、食べ物に例えたものばかり(笑)
これ以外の型もありますが、すべてを覚えて使いこなす必要はありません。色々な型があるんだなと頭の片隅に置き、目的にふさわしい型があれば活用できればよいのではないでしょうか。
基本となる型(雛形)
今回は二つの型をご紹介します。
1. 背景導入型
まずは「背景導入型」。日本では「起承転結」という型を学校で学びますが、アメリカの学生は「背景を説明してから本文に入り、結論で終わる」というのを学びます。(私もみっちり仕込まれました。高校生から習う基本の構成も把握しておくと、より上手にこの型を使えます。)
この背景導入型で代表的なのが、学術論文を書かれる方はすでにご存知であろうIMRaDです。
【IMRaD】学術論文など
IMRaDは学術論文や学術レポートでよく使われる型です。「IMRaD」という名前は、必要パーツの頭文字を取ったものです↓
- (Abstract)(要旨)
- Introduction/background 導入/背景
- Methods方法
- Results 結果
- Discussion/analysis 考察/分析
- (Conclusion)(結論)
タン博士のスライドでもありましたが、この型はハンバーガーに例えられます。
上のパンが導入部分で、研究の背景や状況の説明を書きます。中身のお肉は論文の核となる部分。下のパンは研究結果がもたらす意義、お皿は結論です。そしてすべてがそのお皿の上に置かれているということを表してます。
【実用的な背景導入型】ビジネス場面などで活用
国際協力やビジネスの企画書・提案書・コンセプト・プロジェクトレポート・メールなどでも、背景導入型は使われます。大体は次のような流れに沿います:
- 目的
- 現状・問題点
- 解決策や行動の提案
例えば国際協力プロジェクトの企画書などは背景や問題点の説明で始まり、その後に提案に入ります。研究やプロジェクトの資金調達のプロポーザルの多くもそうです。(もちろん資金提供者が雛形を提示した場合は、それにに忠実に沿ってくださいね。)
ただ、ビジネス界では学界以上に時間が貴重とされます。最後まで読む価値のあるものかを読み手がぱっと見極められるように、文章は極力簡潔にし、冒頭に短い概要を書くことも大切です。
2. 重要メッセージ導入型
さて、大学や院で基本として教えられる背景導入型ですが、社会に出てみると、実用性に欠けてるという面もあります。
それも、私たちが日常で何かを読むのはほとんど、情報を求めている時だからではないでしょうか。1 読者として私たちは「パッと見て、パッと読んで、パッと知りたい 」ので、書き手は「大きなニュースは先に出す」のが最善だと、プレイン・イングリッシュ専門家&著者マーティン・カッツ氏も記しています。
「伝わる短い英語」著者の浅井満智子氏も、「お互いの時間を効率的に使う」ために、「重要な情報は文書の先頭に置く」ことをガイドラインの一つとしてあげています。
そんな「重要メッセージ導入」型の例をここであげます。
【逆三角形型】ニュース記事やプレスリリース、ウェブサイトやブログ記事など
逆三角形型は最も重要なポイント(ニュース・情報)を一番上に書き、重要性の順番でその他の情報を述べていきます。
例えば、イベントが開催されるニュースは、次のような流れになるかもしれません。
- 誰がいつどこで何を開催するのか
- 参加者にとって重要なポイント(例えば、事前登録すれば誰でも参加できること)
- 会議の内容などの詳細
- 開催者のこと
- テーマの重要性・背景など
- 連絡先など(重要な内容ですが、最後にまとめて載せるのが定形である場合、読者が予測する通りのところに載せるのが一番です)
この型は新聞記事などでよく見られる型で、記事全部を掲載するのに十分な紙面がない場合、編集者が最後から削っていけるところから生まれた型だそうです。
【重要メッセージ導入型の応用編】ビジネス場面などで活用
重要メッセージ導入型は、メールや手紙でも使えます。例えば、講師をイベントに招待する手紙を書くとした場合、次のような流れを使います:
- 冒頭の挨拶
- 「〇〇のイベントを◯月◯日に開催するので、お越しいただけますか」 “We would like to invite you as a speaker to the Symposium on Academic Writing (13 February 2024, Tokyo).” ←真っ先に要件を述べてしまいます。
- イベントのテーマ、参加者・主催者などの詳細
- イベントの背景、トピックの重要性など
- 返信先、添付書類などの連絡事項 ←通常最後に載せる情報です。
- 締めの挨拶
前置きが長いと、何のための手紙なのか読み手になかなか伝わらず、非常に読みにくくなってしまいますので、重要点をまず述べるのが効果的です。
その他の「型」
ルポルタージュ作品などの「物語」を伝えるには 「バーベキュー型」があります。こちらは、エピソードなど使ってまず読み手の興味を引き、「この話はなぜ重要なのか」という点を最初の方に伝え、そこから読者を話の奥へ導いていくものです。物語要素があり、情報をはめ込むだけでは成り立たないため、難易度が高い型です。
また、ここですべてを把握することはできませんが、他にもビジネス向けの色々な型があるようです。例えば:
- SCRAP (situation, complication, resolution, action, politeness): 現状、問題、解決策、(相手にとって欲しい)行動、お礼など
- 4Ps (position, problem, possibilities, proposal):現状、問題、選択肢、解決策の提案
- Q&A:質疑応答型も「型」の一つです。
色々ありますね…。
どのように「型」を選べばいいか
文書の構成を決める時一番大切なのは、どれだけ読み手にとって理解しやすいかという点です。そのためにはまず、文書の全体像に立ち返ることをおすすめします。
- 誰のために書くのか
- その人に何を考え・感じ・して欲しいのか
- 何を知ってもらわなければいけないのか
これらを把握してから相手の立場を想像し、伝わりやすいように情報をまとめるのが一番です。
(…とは言えど、国によっては文化の違いなどあるので、「このようにまとめるといい」と一概には言えません。狙った読者層の人に試し読みしてもらうなどできるなら、それに越したことはありませんね😊)
まとめ
- 文書は、目的(相手や状況)に合った型(構成)を使用することが大切です。
- 学術論文なら IMRaD ・プレスリリースは逆三角形型などと、決められた型を雛形として使うことができます。
- 全体像に立ち返って、誰に向けて何を書いているのか、相手に何を伝えようとしているのか、何を考えてもらいたいのか、感じてもらいたいのかを考えましょう。
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※この記事の英和翻訳は、ライターfumiさんにお手伝いいただきました🙏 Image by freeimageslive.co.uk – gratuit
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