英語学術論文のコツ:現在形と過去形の使い分け方

英語学術論文のコツ:現在形と過去形の使い分け方

時計

英語で現在形と過去形などの時制を下手に混ぜると、読んでる側に違和感を与えてしまい、NGです。 では学術論文を書く時には、どの時制がベストなのでしょう。(最後には PDFの無料ダウンロードもありますので、ご利用ください! )

日本語の文章では、流れによって現在形と過去形が混ざっても自然に感じます。学生時代、そんな感覚で英語を書いていたら、いつもアメリカ人先生に赤ペン入れられてました。

英語では、現在形と過去形などを下手に混ぜると、読んでる側に違和感を与えてしまい、NGです。

そこで今回は、学術論文によくあるセクションごとに、時制の使い方を見ていきます。(最後には便利なPDFの無料ダウンロードもありますので、ご利用下さい!)

基本ポイント:時制は混ぜない

基本は、現在形か過去形に統一させること

…なのですが、 学術論文では、

  • 「実験を行ったのは過去なのだから、そこは過去形かな」
  • 「でも結果は、今もそういう現象が世の中で起こっているんだから、現在形??」

…という風に、Introduction、Methods、Results、Discussion、Conclusionのセクションによっては、現在形が相応しそうだったり、過去形の方が正しそうだったりと、単純に「現在形で」「過去形のみで」と言うわけにはいきません。

そこでおすすめは次の通り。1

Introduction=現在形

Introductionでは、 現在知られてる・理解されてる・問われてる事実、一般知識やセオリーを伝えるので、 現在形が基本

Psychologists, parents, and educators generally agree that play is important for a child’s development.

混乱しやすくなるのは、過去のリサーチの結果などを報告したい場合です。

☑ 過去のリサーチ結果 (研究者名なし) =現在形

まずは研究者の名前を文に入れないで、過去のリサーチの結果を述べる場合は、現在形で大丈夫です。(研究者名は脚注などにきちんと明記することをお忘れなく。)

Children with access to early-childhood education demonstrate higher levels of resilience [1].

☑ 過去のリサーチ結果 (研究者名あり) =過去形

(現在形の)一般論などを立証するために過去の研究結果を伝える場合は、過去形で。研究者名は文章に組み込みます。

Women of all classes generally face more hardships than men(←ここまでが一般論なので、現在形). Cleghorn & Gaskell (1984), for example, showed that poor women fared worse than poor men…

☑  現在も有効な研究結果やセオリー、意見等=現在完了形

ただし、過去に行われた様々な研究などの結果をまとめる時には、現在完了形(has/have xxx)を使います。

However, scientists have observed similar reactions but in different situations.

過去に行われた研究でも、その結果は今も有効で、今書いてる論文に関連性があることを伝えます。

この場合の現在完了形は「何が行われたか」に焦点を当てる役割を果たします。(「何が知られてるか」は通常現在形で伝えられます。)

ここで一つ注意するのは、「had been」という風に、過去完了形にはしないことです。

Image by TeroVesalainen from Pixabay

Methods & Results=過去形

実験や分析で何をしたのか、どういう結果が出たのか等、全て過去に起こり、完了したことですので、「Methods」や「Results」はストレートに過去形でまとめましょう。

例えば:

We surveyed parents of children aged 7 to 10 residing in the county.
We found a negative and statistically significant relationship between local public spending on police and crime rates.

Discussion, Conclusion=現在形など

ここまで来ると、難しくなってきます(^^;

基本、現時点でディスカッションをし、 研究内容をセオリーにつなげたいので、現在形で。将来の研究などにつなげるのも、現在形で大丈夫です。

Future studies are needed to further examine regional differences.

その中、Methodや研究結果(Results)を引き出し振り返りたい場合は、過去形も使います。

We were unable to determine whether higher meat consumption caused more heart attacks.

Abstract=両方

論文の一番最後に書くAbstractですが、他のセクションから抜粋した文章で現在形と過去形のミックスになります。

一部のみですが、例:

Even though more than 350,000 men die from prostate cancer every year, broad-based screening for the disease remains a controversial topic…. [T]he present study investigated the diagnostic potential of tumour-associated circulating endothelial cells (tCECs), which have previously been described as a novel, blood-based biomarker for clinically significant cancers.

Bhakdi, SC, et al. (2019). Accuracy of Tumour-Associated Circulating Endothelial Cells as a Screening Biomarker for Clinically Significant Prostate Cancer. Cancers 11(8), 1064; https://doi.org/10.3390/cancers11081064

まとめ

日本語ネイティブからすると混乱しがちな英語の時制。

なるべく統一することに気をつけ、最終的にはネイティブ編集者に目を通してもらうのが、一番確実かもしれません。

↑この記事でご紹介しました、英語論文での時制の使い分け方のまとめ(PDF)です。是非ダウンロードして、ご活用下さい♪

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参考サイト・資料

■日本語サイト

  • 科学英語論文における時制: いくつかの文献にある時制の使い分け方のまとめと、実際の論文を例として時制を分析。すごいです。
  • 英語の時間的感覚II:難しいのですが…説明を取り上げたということがすごいな、面白いなと思いました。(ナビゲーションがちょっと難しいのが残念ですが…;)

■英語サイト

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Footnotes

  1. あくまでも目安としてです。出版社の好みなどあるかもしれませんので、気になるジャーナルの過去記事をいくつか読み、どんな傾向があるか確認されることをおすすめします。

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